悪魔という超自然的存在
「悪魔憑き」という概念は、古くは5500年前、メソポタミア文明の頃には存在していました。
そして、この悪魔憑きに対する祈りや儀式が行われており、魔術的な儀式や呪文が記録されています。
5000年程前になると、神官による悪魔祓いやお守りも存在し始めます。
2500年程前、古代ギリシャ時代では、精神疾患の一部が「聖なる病」として神々や悪霊によるものであるとされ、超自然的な信仰の中に根付いていました。
それからはキリスト教やヒンドゥー教、仏教など、様々な宗教的概念として存在するようになります。
そして、現代では、超自然的現象としてだけではなく、願いを叶える力としても受け止められるようになりました。
願いを叶えるための儀式、それが、黒魔術の1つとして知られる悪魔召喚です。
悪魔召喚は、儀式や呪文、呪物を通じて、悪魔や霊的存在を喚び出す行為です。
それは、突如降りかかる災厄ではなく、人間が自らコントロールする超自然現象なのです。
現代における悪魔召喚の主な目的
- 特定の知識や情報を得るため
- 願望を実現するための助力を得るため
- 特定の人物や状況に影響を及ぼすため
- 霊的な力を得るため
- 自身の能力や影響力を高めるため
今回は、そんな人々の欲望が生み出した「悪魔召喚」について、成功例や失敗例など実例の中から、そのリスクとデメリットについて見ていきたいと思います。
悪魔召喚とは
悪魔召喚は、召喚魔術もしくは喚起魔術と呼ばれる儀式魔術の一種で、多くの技法が存在します。
古来より用いられる魔法陣での召喚や、依代を用意して憑依させるもの、生贄を捧げる方法とその様式は多種多様です。
悪魔召喚は複雑な儀式であればあるほど強力な効果を発揮します。
それは、悪魔召喚が数多くのリスクを孕んでいることにも由来しています。
魔術師たちは、それらのリスクヘッジに多様な儀式を考案してきました。
悪魔召喚、それは「願いを叶える力」を得ること以上に「リスクを回避する能力」が求められる魔術なのです。
たとえ願いがかなったとしても、その後に致命的な問題や事故が起きてしまっては元も子もありません。
日本人の皆様には信じられないことかもしれませんが、黒魔術は現代でも運用されています。
インドネシアに住む人の話によると、インドネシア人の8~9割は黒魔術を信じているという話もあります。
30年ほど前のインドネシアでは大統領が、国家の重要な政策などの決断をする際に魔術師の指示を仰いでいました。
2022年には黒魔術を取り締まる刑法も成立しました。
現在は、人づてに依頼することで黒魔術を行っているそうです。
こういった国はなにもインドネシアだけではありません。
サウジアラビアやイラン、エジプトやナイジェリアでも重罪とされ取り締まられています。
悪魔召喚は「黒魔術」とされ、倫理やルールを破ってでも周囲に影響を与えるものであります。
その行為は、儀式を行った自分だけではなく自身と関わりのある人に不幸をもたらしてしまうことも多く、確かな技術と知識、能力がなければ最悪の結果を招きます。
だからこそ悪魔召喚を行う際には、自分の身を守るために予め結界を張ってから行ったり、予想外の緊急事態が起きたときに冷静に対処できるよう対策しておくのです。
そして、日本以外では未だに多くの魔術師がおり、人々の生活に根付いています。
もし、あなたが黒魔術を利用したとして、それを知られてしまうことがあれば、他の魔術師に仕返しや邪魔をされることだって起こりうるのです。
悪魔召喚のデメリット
悪魔召喚のひとつめのデメリットとしてまず挙げられるのは、悪魔召喚自体がとにかく難しいことです。
先に紹介したように、悪魔召喚は複雑な儀式でなければ叶えられる願いが限られてしまいます。
下級の悪魔を召喚する簡単なものでも一ヶ月、複雑な儀式は時に数ヶ月を要することもあり、簡単に行使できるものではありません。
十分な準備と危険性を排除した上で行う必要があるからです。
実際に召喚が成功したとしても、それで終わりではありません。
むしろ悪魔召喚は、悪魔を召喚してからが本番と言えます。
悪魔はとても狡猾で、人間を騙すことが非常に上手です。
彼らは最大の利益を得るために、実に巧妙な話術で人間を惑わします。
特に悪魔にとっての最大の利益とは、人間そのものです。
肉体の一部や魂は悪魔が最も求めるものでしょう。
悪魔召喚において重要なのは、入念な準備と悪魔に惑わされない強い意志、そして交渉術です。
これらが揃っていなければ、気付かぬうちに不利な契約を結ばされたり、召喚に成功した瞬間から悪魔に利用され、悲惨な最期を迎える可能性もあります。
悪魔召喚は、失敗してしまった場合にも当然大きな反動が来ます。常に死と隣り合わせだと思ってください。
悪魔召喚は、長い年月をかけて心身共に自身を鍛えてからようやくできるようになります。
黒魔術の中でも秘術扱いであるこの手法は、万全の状態ですらすべての危険を回避することはできません。
悪魔召喚で起こった悲劇
実際に、悪魔召喚を行うことで起こった悲劇を紹介します。
願いを叶えるために、石版に悪魔を憑依させた人がいました。
結論から言うと、その人の願いは叶いました。
願いが叶ったということは、一見成功しているように見えます。
しかし、この悪魔召喚には大きな失敗がありました。
願いが叶ったあと、親類縁者や友人など、周囲の人々が次々に亡くなるようになったのです。
死因は様々で、健康体だったのに急に病気に罹ったり事故に遭うなど、知っている人達がどんどん亡くなっていきます。
召喚者は「さすがにおかしい」と思い、石版を壊して強制的に契約を断ち切ろうとしますが、叩いても落としても、なにをしても石版が壊れることはありませんでした。特別頑丈だったわけでもないのに、ひび1つ入らないのです。
その間もどんどんと近しい人が亡くなっていきましたが、最終的にどうなったかはわかりません。
もしかしたら、召喚者も同じように亡くなってしまった可能性もあるでしょう。
この召喚の失敗は、恐らく契約の際にきちんとした手順を踏まなかったことが原因ではないかと推測されます。
本来、悪魔を召喚して交渉が成立、契約をした場合、契約内容が完遂された時点で、悪魔は帰還させなければなりません。
全てが終わって「日常に戻る」ことを認識させなければならないのです。
しかし、状況を見るに、悪魔は石版に宿ったままです。
つまり、悪魔召喚が不完全に終わってしまい、不完全な契約のもと、悪魔が自由に干渉できる状況になってしまっているのです。
その石版は現在も行方不明ですが、もし現存しているのならば非常に危険です。
完全に成功した悪魔召喚
ところで、アレイスター・クロウリーという人物をご存知でしょうか?
彼は1875~1947年に実在していたイギリスのオカルティストで、儀式魔術師です。
彼は魔術の研究者で、多くの理論や儀式を記した書籍も残しており、魔術師の中ではとても有名です。悪魔召喚を成功させた一人でもあります。
アレイスター・クロウリーは、悪魔コロンゾンの召喚に成功したと言われています。
コロンゾンは邪悪な意識の集合体で、知識の本質に近付こうとする人を誘惑し、阻む悪魔です。
1909年、アレイスター・クロウリーはアルジェリア南部の砂漠に弟子のヴィクター・ニューバーグと共に赴き、悪魔召喚を試みました。
触媒として喉をかききった鳩を三角陣の中に設置し、クロウリーもその中に入ります。
弟子は別の魔法陣の中に入り、呪文を唱えて悪魔召喚を行いました。
召喚は見事成功し、クロウリーに悪魔コロンゾンが憑依します。しかし、コロンゾンは様々な姿に変化することで弟子を誘惑し、三角陣の中から出ようと画策しました。
弟子はその誘惑に負け、一度だけコロンゾンが外に出ることを許してしまいます。
コロンゾンはそのまま弟子を殺そうと襲いかかりましたが、間一髪で弟子が魔術の短剣で応戦し、再び三角陣の中に戻すことができました。
その後触媒の鳩の血が尽きたため、コロンゾンは立ち去ります。
クロウリーはその間、ずっと恍惚とした状態だったそうです。
結果的に悪魔召喚は成功したと言えますが、一歩間違えれば弟子は命を落としていたでしょう。
悪魔はこうして召喚者を誘惑し、自由を得ようとしたり自分に有利な状況を作り出そうとするのです。
悪魔召喚に「絶対」は無い
悪魔召喚は、その危険性やリスクを理解せずに挑むことは非常に危険です。
悪魔召喚は絶大な力を得るための行為ですが、それと同時に悪魔がもたらす悪影響に身も心も晒す行為でもあります。
混乱や錯乱、恐怖や不安に襲われる可能性については容易に想像できるでしょう。
また、悪魔を含む霊的存在の影響は“滞留する”ことが多くあります。
例えば、召喚者が悪魔や霊的存在を完全に退去させることができなかった場合、それらの存在が召喚者の生活に干渉し続けるといった状態となります。
意思を持ち自由に動ける存在ほど願いを叶えてくれる可能性も高まりますが、そういった存在は召喚者の要求に従うとは限りません。
思念体やエネルギー体のままこの世にに留まる場合もあります。
そもそも、物理的な肉体を持たない存在はエネルギーの塊のようなものです。
それらは周囲の物質やエネルギーを変質させ、それらがまた周囲に影響を与え連鎖を起こすのは当然です。
もし仮に、きちんと悪魔や霊体を帰還させられたとして、願いが叶った状態が消えないということは、その悪魔による影響も残り続けるということなのです。
それでもあなたは悪魔召喚をやろうと思いますか?
そして、悪魔召喚を終わらせたあともすべてをコントロールすることはできますか?
悪魔召喚の成功、それは悪魔との駆け引きの始まりであり、悪魔を完全に制御し帰還させたとしても、決して元の状態には戻れない魔術なのです。