心霊体験コラム

心霊体験談【落とし物】

いつものように駅のホームで電車を待っていた。

電車待ちの列に並んでいると、後ろからトン、と肩を叩かれた。振り返ってみると変な格好の人がニコニコしながらこっちを見ていた。その人は、今時いないような珍しい格好をしていた。紳士服にシルクハット、見た感じは40から50歳くらいの男性だったか‥どう見ても変な人に見えた。映画とかならまだしも日常でこんな格好の人がいるはずはない。

「やばいなあ朝から変な人に捕まっちまったよ」と内心思いながら「はい‥僕になんか用ですか?」と言ってみた。するとその男性は「はい。これが落ちていたんですが、あなたのものではないかと思って。」と言いながら、その人は手をグーの格好にしながら前に出した。「なんか落としてましたか。すいません。」と恐縮しながら、自分はその人の手の下に自分の手を差し出した。「今度は落とさないようにね」と言いながらその人は手を離した。

でも自分の手の中には何もなかった。意味が分からず「あの」と声をかけたら、その人はもう消えていた。自分の目の前では小太りの中年男性が新聞を読んでいた。朝から幽霊狐につままれたような感じだった。何なんだろうと思い前を向きなおした。

すると急に頭が痛くなった。頭が割れそうなくらい。吐き気もしてきた。電車を待つ列から抜け出して駅のトイレに駆け込んだ。そして嘔吐した。それからしばらくトイレの個室に入っていた。

1時間後、ようやく体調が回復した。トイレから出てみると、辺りがどよめいていた。何かあったのか駅員さんに聞いてみると、電車が事故を起こしたとのこと。人が轢かれたりとかしたのかな、とその時は思っていた。でもそれは間違いだった。もっと重大な列車事故が起こっていた。あの有名な脱線事故だ。脱線したその電車は自分が乗ろうとしていた電車だった。

今でも、あの人が自分に手渡してくれたものは命だったんじゃないかと思う。でも、なぜ自分が助かったのかは未だに謎。自分は普通の一般人だし、霊感も無いのに。

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