今住んでいる所は隣人トラブルが酷いから、引っ越しをしたくて不動産屋で部屋を探していた時の話です。
でもお金がないので安い部屋を優先的に探していたら「訳ありの物件ですが...」と不動産屋がいくつかの物件を紹介してくれました。
隣人トラブルで引っ越ししようと思っているから、流石に「ヤクザ」とか「頭のヤバい奴」絡みの『隣人系訳あり物件』は嫌だけれど、まあそれ以外ならいいかな?と思い、掲載にも載っていない様な『格安の訳あり物件』を、不動産屋に3部屋紹介してもらい部屋を内見して回ることにしました。
一軒目に紹介してもらった物件は【病死】の事故物件。
病死と聞いて「まあ自殺じゃないし、病気で人が死んでいる物件なんていくらでもあるだろうし...孤独死とかって訳でも無さそうだし」と思い、特に気にするほどの事じゃないかなと思いながら内見に向かいました。
物件に到着し部屋に入ってみたが特に異臭もしないし、ここで人が死んだと言われなければ、わからない程に中は綺麗な物件だった。
だった...だったんだけどだけど「薄暗い...」
日当たりが悪く日中でも常に部屋が薄暗かった...
家賃も安かったので「ここでもまあ良いかなぁ...」なんて考えたが「まあまだあと2つあるから、残りの物件も見てからでも遅くないか」と思い取り合えず保留と言う事にして2つ目の物件を見に行くことにしました。
二軒目に紹介してもらった物件は【自殺】があった事故物件。
物件に到着し、部屋の中でまず最初に気になったのは、やはり自殺した場所でした。
「首吊り」と聞いたけど、人が首を釣れるような場所は見当たらず「どこで首吊り自殺したんだろう?」と思いながら部屋を見回していたら、ふと目に留まったドアノブが気になりました。
「あっ、わかりますか...」と不動産屋に言われ「ここか...」と思いました。
不動産屋から、玄関のドアノブで首吊りしたことを教えてもらい「人が首吊り自殺したドアノブを毎日触らないといけないのか...」と考えたら「それはちょっと嫌だなぁ...」と思い「それならまだ一軒目の方が良いか...」と思ったので、二軒目も契約する事なく物件をあとにしました。
最後に紹介してもらった三軒目は、【人が寄り付かない】という物件。
死人が出た訳でも無く、隣人に問題がある訳でもない。
だったら「日当たり」とか「騒音問題」とか、物件自体に問題のある『欠陥住宅』みたいな物件なのかな?と思ったが、不動産屋に聞くとそう言う訳でもないらしい。
分かりやすい不動産トラブルは起きていないはずなのだが、何故か一ヶ月もしないうちに入居者が出て行ってしまう物件らしく、一番短かった入居者の最短入居記録はたったの『3日間』だったらしい。
とは言え書類上で見ている物件の条件は一番良く「取り合えず見に行くか...」と思い、不動産屋に内見の案内を御願いし物件に向かいました。
最後の物件は、マンションの最上階でエレベーター付きの物件だでした。
外観も良く「ここの最上階がこの値段で借りれるのか?部屋の中はボロボロだったりとかするのかな?本当にこの物件大丈夫なんだろうか?」なんて思ったが「取り合えずここまで来たし見てみるか」と思い不動産屋とエレベーターに乗り込みました。
しかし、これが大きな間違いでした...
エレベーターが問題の部屋がある最上階に到着しエレベーターを降りたとたん、寒くもないのに鳥肌が立ち「なんか気持ち悪いな...」感じました。
その日は春先のポカポカ陽気で、天気予報でも初夏並みの気温と言っているほど暖かい日でした。
実際にその日は、内見を回っている際に少し汗ばむほどの気温で、羽織っていた上着を脱ぐかどうか迷っていたほどでした。
問題の部屋がある階は最上階に位置しており、エレベーターを降りた廊下も日当たりが悪い訳ではありませんでした。
にもかかわらず、寒気の様なものを感じ全身の毛穴が逆立つのを感じ、全身鳥肌が立っていたので「ちょっと嫌だなぁ...」と思いつつも「ここまで来たし、取り合えず部屋ぐらい見よう」と意を決して部屋の前へと向かいました。
この判断が全ての間違いだったのです...
部屋の前に到着し問題の部屋に入ろうと不動産屋が部屋のドアに鍵を指そうとすると、部屋の方から『水の音』が聞こえてきたのです。
さっきの嫌な感じもあり少し気になったのだけれど「他の部屋かもしれないし...」と思いながらドアを開けてもらいました。
今思えば、部屋の中から水の音がしていると言う事を受け入れたくなかったから、この時は自分にそう言い聞かせて「水の音」を受け入れたくなかっただけだったのかもしれません...
部屋を開けると途端に部屋の中から『強烈な異臭』がしました...
異臭は『死臭』みたいな臭いだけど、なんだか湿った感じがする...
部屋から漂って来る異臭に顔をしかめていると、不動産屋もそれに気付いたみたいで部屋の中に入るの二人ともためらってしまいました。
「見るのやめましょうか?」と聞かれた次の瞬間、部屋の中で「バタン!!」とドアの閉まる音がしました。
まさか幽霊?と焦ったけど「こんな晴れた真昼間から幽霊なんてありえないですよね?」「気のせい...気のせいですよ...ははは...」と2人で笑って自分たちに言い聞かせました。
今思えば、この時ぼくの顔は引きつっていたと思います。
嫌な雰囲気を感じつつも不動産屋と中に入る事にしたので、取り合えず部屋の中へと足を踏み入れて行くが、匂いがとにかく凄かった。
何にしてもまずはこの臭いの元を突き止めねばならないと思い、不動産屋と共にまずは臭いの元を探る事にしました。
大抵の場合、臭いの原因として一番怪しいのは「下水」だろうと言う話しになり、不動産屋と臭いの出そうな水回りを確認しました。
部屋に入る前の「水の音」の事もあり、十中八九臭いの原因は水回りの排水管辺りから下水の臭いが上がってきているのだろうと言う話しになっていたので、水回りは全て不動産屋と共に確認したのだが、どうやら下水からじゃない様でした。
下水を確認する為に部屋に足を踏み入れた時から薄々感じてはいたが、臭いの発生源があり異臭が充満していると言うよりも、部屋全体から臭いがしている様な感じはしていました。
臭いの元を探るべく下水の臭いが上がって来る可能性のある水回りをすべてチェックし、臭いの原因は水回り・下水では無い事が確証に変わってしまい、部屋全体が臭うと言う事に気持ち悪さを感じました。
それに下水の臭いを探る為、部屋の中をウロウロしていると何かの視線を感じる様な気もしました...
ともかく不動産屋と2人で部屋の中を見て回りました。
この物件は、3つも部屋があるのに家賃は3万円以下で風呂・トイレは別で、最上階だがエレベーターもあるので、上り下りには特に困る事も無さそうだし、低層階と違って日当たりも良好でした。
臭いの件は気になるが、きっと管理が行き届いて無かったせいで何かの臭いが籠ってただけだろうし、入居前に壁紙を張り替えてハウスクリーニングも入れて掃除してくれるらしいので、恐らく臭いは何とかなるだろうとの事。
そうともなれば特に問題はないどころか「格安良好物件」でしかない。
最初の嫌な感じはあったものの、これだけの好条件「ここにしようかな~」と迷っていると、部屋に入る前に聞こえていた『水の音』がまた聞こえてきました。
この「水の音」の正体がわからなければ、流石にこの好条件でも「気持ち悪くて住めない...」と思い、慌ててキッチンや風呂場と水回りを改めて確認したけれど、どこからも水は出ていませんでした...
原因がわからず不動産屋と話していたら「壁が薄いのかもしれませんね...」と言われ「水の音が聞こえるくらい壁が薄かったら、音にはかなり気を付けなきゃいけないな...この音が筒抜けになっていて隣人に生活環境や内容がバレてしまうのが、入居者が直ぐに退去してしまう原因なんだろうか?」なんて考えていたらギョッとしてしまいました。
ベランダに人の影が見えたのです。
しかも窓はすりガラスじゃないのにも関わらず、ベランダに立っている横向きの黒い人の影の姿がすりガラス越しの様にぼやけてよく見えなかったのです...
窓までの距離は2mくらいしか無いのに、ざっくりと横向きの人の影としか認識出来ない程度にしか分からないのだけど、間違いなくそこには人が立っていて、横向きなんだけどなんだかニヤニヤと笑ってるように見えていました。
不動産屋は隣に居るし「いったい誰だ?勝手に誰か入り込んでたのか?そういえば空き部屋に浮浪者なんかが侵入して住み着いている事があるって昔何かで聞いたことがある気がするなぁ...玄関を開けた時のドアを閉める音もこいつの仕業か?」なんて考えを巡らせていると、次の瞬間「バシャー」っとバケツの水をひっくり返すような音が聞こえて、女が立ってるベランダからガラス戸に水が「ビシャ」っと跳ねたような気がしました。
突然の出来事に驚いてしまい頭は少しパニック状態で混乱していたが「水の音の原因はこの女か?」と考えを巡らせていると、女の顔がゆっくりとこちらに振り返ろうとしているのがわかり、そこで「ハッ」となり、次の瞬間、不動産屋と2人で玄関へと猛ダッシュしていました。
不動産屋が鍵を慌ててかけて、そのまま2人してエレベーターへと駆け込み、そのまま逃げる様にそのマンションをあとにしました...
アレは多分見てはいけないもので、アレがこの部屋に入居した人間たちが直ぐに退去してしまう原因だと言う事は直ぐにわかったが、不動産屋に戻るまで2人共一言もしゃべる事はありませんでした。
もちろん、あんな事があって3軒目の物件にする訳も無く、結局一番最初の部屋に引っ越そうと思い「一軒目の物件で...」と言う話しになり、3軒目での事には一言も触れずその日は家路につきました。
「訳あり物件には、やっぱりそれ相応の訳があるんだな...」なんて思いながら「でも、入居を決める前に訳ありの原因が分かって良かったのかもしれないな...」と考えている内に家に着きました。
部屋の前に立ち鍵を開けようとしながら「今日はなんだか大変な日だったけど、何はともあれこの隣人トラブルに悩まされている部屋ともこれでおさらばだ」なんて思うと、あんな経験をして暗かった気持ちも少し晴れて気持ちも前向きになってきました。
玄関を開けて部屋に入りながら「そう思うとこの部屋ともさよならか...」なんて少し感傷に浸る様な気にもなりました。
しかし、そんな気持ちもリビングに入った瞬間全て吹き飛びました。
ベランダにあの女が立っていたのです...
直ぐに部屋から飛び出しそのまま逃げだしました...
その直後携帯が鳴り「ビクッ」としたが恐る恐る携帯を見ると、電話の相手は不動産屋でした。
直感的に何かあったと感じ電話に出ると、不動産屋も同じように「自宅に帰るとベランダにあの女が立っていた」というのです...
これは不味いと思い、直ぐに不動産屋と合流し、不動産屋と二人でお祓いに行くことになりました。
結局、お祓いを受けた事で高いお祓い代を払い、引っ越しの為の資金がなくなってしまったので引っ越しは出来ませんでした。