心霊体験コラム

心霊体験談【学生寮】 K府 Sさん

これは聞いた時ちょっとゾッとした話なんだけど、これは俺が大学に入学してすぐの頃の話し。
見た目はごっついんだけど、見た目とは裏腹におとなしくて若干「おねぇ」っぽい感じのやつと友達になったんだ。
そいつは「LUNA SEA(ルナ シー)」の「真矢」に似ていたから、ここでは「シンヤ」としておく。

うちの大学にはユニデンスっていう大学の敷地内に立っている学内の学生寮があった。
20階建てくらいで、パッと見ビルみたいなバカでかい学生寮だったんだけど、学内の敷地に立っていて見た目も綺麗な感じだし便も良い感じだったから、俺は少しこの学生寮に入居している学生の事を「羨ましい」とも思っていた。
俺は「地元からあんまり離れるのも面倒だなぁ...一人暮らしには憧れるけどそれはそれで家事とかもめんどくさそうだしなぁ...」なんて思い、結局家から通える距離の近場の大学って事で、この大学を選んだもんだから、もちろん学生寮なんて入れて貰える訳も無く、学生寮とは言え一人暮らしをして自由で楽しそうな学生たちを少し妬んでもいた。

そんな中、シンヤは入学したて知り合った頃、その学生寮に住んでいて、俺は「良いなぁ~」なんて言ってシンヤの事を羨ましがっていた。
シンヤは、実家から大学まで通おうとすると、毎日片道2時間以上かかる道のりを通わなければいけないらしく、毎日大学に行くだけで行き帰りの往復4時間は流石に難しいだろうと、親御さんたちがシンヤの事を心配し学生寮に入れてくれたらしい。
そんなこともあって、入学当初の頃はシンヤはそこに住んでいたんだけど、5月の半ばくらいで学生寮生活を止めて、学生寮を退去して突然実家から通いだしたんだ。

さっきも言った様に、シンヤの実家からうちの大学までは片道2時間以上はかかるし、学生寮は年度の始めから1年契約になっているから途中で部屋を出たとしても、家賃は1円も返ってこないのに、ほぼ一年分の家賃を無駄にしてまでこんなに直ぐに学生寮を出て行くのは不思議に思ったが、「使わないから自由に使っていいよ」と言ってシンヤが鍵を貸してくれたので、俺たちは講義の合間なんかにいつもシンヤの住んでいた学生寮を使って暇つぶしをしていた。

そんなこともあって、シンヤの住んでいた学生寮の部屋は、俺たち仲の良い学生の間でほとんど「たまり場」扱いになっていた。
でも、みんなが集まっているって言うのに、借主である当の本人(シンヤ)は、何があっても絶対にその部屋に入るどころか、近づこうとすらしなかった...
「なんだか変だな...」とも思ったが、若さなんかもあってかもしれないけど、直ぐに気にならなくなった。

それからも、シンヤの住んでいた学生寮の部屋は、俺たちのたまり場としていつも使われていたんだけど、テレビが勝手についたり消えたり、閉めたはずの鍵が開いていたりとか、ちょくちょくおかしなことがあったりはした。
けど、元々その学生寮は「いわくつき」と言うか、心霊系の話がよく噂されるところで、大学内でも「学生寮は色々と出るから」とうのは有名な話しで、うちの大学の学生だったら誰でも知っている様な話しで、学生寮に入った事のある人間なら誰でも一度は経験があるぐらいの物だった。
だから「これか、噂の心霊現象って奴は」ぐらいにしか思ってなかったし、事実その程度の心霊現象だったら日常的に起きていたから、そこまで気にしてなかった。
実際に幽霊が出たりとか、極端に身の危険を感じる様な心霊現象が起きていれば、俺たちも少しは恐怖を感じたのかもしれないけれど、日常的に起きている心霊現象のほとんどは「テレビのノイズ」とか「照明の点滅」「ドアが勝手に開く」「シャワーが勝手に出る」とかそんな感じの物ばかりだった。
だから俺たちも、だんだんとそれが普通になって来て、慣れてしまったもんだから「またか」ぐらいにしか思ってなくて、「めんどくさいなぁ...」ぐらいにしか受け止めてなかった。

そんなある日の話しなんだけど、シンヤと学食でたまたま二人っきりになる機会があった。
その時に、興味本位もあって軽い気持ちで「なんであんなに直ぐに学生寮を出て行ったのか?」と言う事について聞いてみたんだ。
「そういや、何でお前、実家あんなに遠いのに学生寮から通わないの?大変だろ?」とシンヤに言うと、その瞬間それまで笑顔だったシンヤの顔が真顔になって、その直後に今にも泣き出しそうな顔をしながら「その話はマジでやめてください...お願いします...お願いします...」と何かに怯える様に言いだした。
その姿は、俺に懇願している様な姿にも見える程で、俺は周りの学生の目もあるから取り合えずシンヤを落ち着かせようと思った。
ちなみに、シンヤが俺に対して敬語なのは、実は俺が浪人していて一浪してから入学しているので歳が一個上だから。

シンヤのガチで泣きだしそうな声と表情に驚きもあり、俺もあわてて「スマン、スマン」としか言えなかったが、取り合えずシンヤを落ち着かせようとした。
そうして、しばらくの間気まずい沈黙が流れ、無音の時間が過ぎた後にシンヤの方から重々しく口を開いた。
「俺...見ちゃったんですよ...」とシンヤは俯いたまま、今にも消え入りそうな声で話し始めた。
「見ちゃったって...幽霊?」と俺がシンヤに返すと、シンヤは下を向いたまま頷いた重いを開き「ちょっと前の話なんすけど...学生寮の俺の部屋の窓から階段が見えるじゃないですか、たまたまその階段を見た時になんか女が立ってたんですよ...」

うちの学生寮は、男子寮と女子寮が分かれていて、だから基本的には女子寮に男子がいるなんて事は無くて、もちろん同じように男子寮に女子が居る事は基本的に無い。
でも、女子が男子寮に入るのは割と簡単だったから、男子寮の生徒が学生寮に女子を連れ込んでいるなんて事はよくあった。
まあ逆は相当難しいけどw

話しを戻そう。
シンヤは続けてこう言った
最初はただの女子学生かな?って思ってたんですよ...だからその時は特に気に留めても無くて普通に生活してたんですよ。でもそれから2時間くらいして、またフッと階段が目に入ったんですよ...そしたらその女まだそこに立っていたんですよ...それに、その女さっき2時間前に見た時から全然動いてなくて...俺「やっべー」って思って...凄い怖くなって直ぐにカーテン閉めて、そのままベットに入って布団にもぐって寝たんです。
それで、朝起きてみたらその女もいなくなってたから「学生寮の誰かが何かヤバい女でも拾ってきたのかな?」って思って「怖がって損したかな?」ぐらいに思って、そのままその日はその女の事なんて忘れてしまってて、昼間は特に気にする事も無く講義を受けたりして過ごしてたんですよ。
でも、その女の事なんてすっかり忘れてたのに、次の日また普通に部屋で生活して時に「フッと」階段が目に入って、階段の方を見てみたらまた「あの女」が居るんすよ...
しかも、その女まったく同じ場所に昨日と同じ格好して立ってるんですよ...

ちなみにその女、顔は長い髪に隠れてて見えなかったそうだ。

それで、俺また怖くなってカーテンを閉めて直ぐに寝たんですけど、その次の日も朝にはいなくなってたんですよ。
でも、次の日の夜には、またその女がいるんです...
何時から現れて、何時に消えるとかは全然わかんないんですけど、その女は気が付いたらそこに居て、朝になると消えてるんです...
最初こそ女が毎日階段に立っている事にビビってたんですけど、毎日見てると流石に俺もだんだん慣れてきて、俺に害がある訳でもなかったから「あっ、今日も居るわ」ぐらいにしか思わなくなっていたんです。
でも、ある日俺気づいちゃったんですよ...

と言い出すと、シンヤは視点の定まらない目を小刻みに左右に揺らしていた。
俺はシンヤの中でその時の恐怖が蘇ってきているように見えた...

「あの女、毎日、毎日同じところに立ってるなぁ」と思ってたんですけど、違ったんです...
実は毎日、毎日1段ずつ階段を上がってたんですよ...最初は5階だったのに、最後の方は俺の部屋がある8階のすぐ下の段で...
それで、俺の部屋、学生寮の角部屋で寮の中で一番階段に近いじゃないですか、それで最初は女の顔も長い髪の毛に隠れて全然見えてなかったんですけど...女が階段を上って来ているから徐々に近づいてきて、ある日その女の顔が見えたんですよ...
髪の隙間から見えた目が明らかにこっちを見てて、俺を見て笑ってるんですよ...「もうすぐお前の所に着くぞ」と言わんばかりに...
その次の日からあの部屋には一回も入っていません...

シンヤの話はそれで終わった...
その後、俺もシンヤもその話をすることなく一年が経った...
俺もなんだか、その話を聞いてシンヤになんて言ってやったら良いのか分からなくて、それに、この話を聞いてから俺自身あの部屋に近寄りがたくなってしまって、あれだけたまり場の様にみんなで集まっていた部屋に行かなくなった...

これは後日談になるんだが、冒頭でも話した様に、学生寮のその部屋は1年契約になっているので、年度末に学生寮を退去する為、部屋を整理しにシンヤはほぼ一年ぶりに、例の学生寮の部屋に入ったらしいんだ。
しかし、その日を境に俺たちがシンヤに会うことはなかった...
年度の切り替わりである春休みの間に急に大学を辞めてしまったのだ...
それ以来シンヤには連絡が取れず、大学の友達は誰もシンヤのその後を知らないとのことだった...
俺らの中では部屋を片付けに行ったその時に、相当やばい霊を見たのか、やばい目にあったんじゃねーか?って噂になってるけど、俺はあの日シンヤが話してくれたあの女と遭遇してしまって、何か良く無い事がシンヤの身に起こったんじゃないか?と思っている...
真相はわからないけど、俺の大学生活の中で引っ掛かってることの一つで、今もあの部屋は普通に使われているらしいと聞いてゾクッとした...

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