今からお話しするのは自分の実体験で、なんて言うかまだ終わっていないと言うか...
まあなんだか説明が難しいんですが...とりあえずお話しします...
自分は23歳の男性で、現在は実家暮らしの介護士をしています。
家族は「父・母・弟・自分」の四人家族で、弟はこの春から就職のため一人暮らしを始める予定で、その日も夕食後に居間で「父・母・俺」でテレビを見ながら「弟の住む家はどこにしようか?」とか「初めての一人暮らしで必要なものは何かな?」などと話しており、弟は一人自分の部屋で「引っ越し」や「就職」に関係する支度をしていた。
そんなこんなと話しをしながら、居間で流れていたテレビは、確か「なんでも鑑定団」を見ていたと思う。
食事や風呂も一通り終わって、夜の一家団欒と言った感じのひと時を過ごしながら、弟が独り立ちする嬉しさの反面寂しさや、それ以上に心配な気持ちを抱きつつ、父・母と弟について「あ~でもない」「こ~でもない」と話しながらテレビを見ていると、不意にテレビにノイズが入った。
一瞬「んっ?」っと思ったけど、すぐに治ったので俺は特に気にせずテレビを見続けながら「でさ~」っと話を進めていた。
俺は、テレビに一瞬ノイズが入った事なんて全く気にしていなかったんだが、話しを続けながら両親に目線を移すと、ある異変に気がついた。
俺とは違い、テレビにノイズが入ったところから父と母に刃何か気にかかる事があったらしく、両親が口を半開きにしていた。
「なんだ?」っと思ったんだが、父と母は何かに驚いたように目を全開に見開きテレビの方を見ていた。
「何どうしたの?」っと自分は今まで見たことのない父と母の顔に動揺しながら2人に尋ねた。
しかし、父と母は俺の声なんて全く聞こえていないみたいで、俺を無視してテレビを見続けていた。
すると、突然父と母の見開いた目だけが「ギョロっと」俺の方を見た。
かと思ったら、次の瞬間まるで今まで何もなかったように「でもさ~弟は自炊とか出来ないし、炊事・洗濯とかの家事は大丈夫じゃないからなぁ」と話し始めた。
俺は「ちょっ、ちょっ、ちょっと待って。今の何?今のは何なの?」と聞いた。
うちの父と母は、二人とも普段からあまり冗談とかは言わない方で、昔からお硬い性格だったんだ。
だから、もちろん今までもそんな事をしたことは一度も無かったし、冗談でもあんな変なことをするとは到底思えなかった...
不思議なもので、俺が「なんだったの?」と聞いた事に対して、父と母ともに目を丸くして「きょとん...」とした顔している。
両親の性格を知っている自分は、それが誰かを騙すためのリアクションではなく、素のリアクションであることが直ぐに分かって、同時に何とも言えない違和感を覚えた...
父と母はさっきの目を見開いてテレビを見つめていた事を覚えていなかった。
それが、嘘を言っている感じではない事を察すると「いや...何でも...」と、俺は口ごもってしまい下を向いた...
すると「ところで自分はいつ死ぬの?」「はぁ?」「そうだなあ~その話もした方がいいなあ」「いつにするんだ?自殺か?事故か?」「はぁ?」
意味が分からなかった...
突然の事の連発にかなり困惑している自分は、「えぇ?俺?死?はぁ?...」と、かなりしどろもどろだったと思う。
しかし、両親はまるで当たり前のように話を進めていた。
「こっちも今まで待ってたんだ、そろそろいいだろう?」「手伝うからね。大丈夫だからね。」と、父と母は尚も淡々と話をし続けている。
「首吊りは糞尿とかで後が汚れるから汚い...掃除も大変...」とか「睡眠薬がいい!!」「でも今の睡眠薬は簡単に死ねない」とか「飛び降りは、途中で気絶すれば痛くない」とか、まるで見たことや体験したことがあるかのように、そしてどこが面白いのかわからないが父も母も笑ってもいた。
「ちょっと、さっきから何変なこと言ってんだよ...」明らかにいつもと違う父と母に不安と恐怖を感じて、俺は2人に向かって大声で怒鳴ったんだ。
すると、父と母が自分の方に「クッと」顔を向けたんだけど、振り返った父と母の顔の異変にはすぐ気づいた。
2人とも目が左右逆を向いていて、歌舞伎の離れ目みたいになっていたんだ。
「なんだあれ...どうなってんだ...」と思った次の瞬間、父と母が揃って「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」と叫び出した。
目は左右逆を向いていたが、顔はしっかりと俺の方を向きながら壊れた人形のように、繰り返し「死ね」を連呼していた。
離れ目になっているから目こそ合ってはいないものの、間違いなくジッと俺の事を見つめながら「死ね」と叫び続けていると言う事はわかった。
見た目こそ父と母の姿をしているけれど、いま目の前に居る父と母の見た目をした全く異なる存在から、自分に向かって放たれ続けている「死ね」と言う言葉と、その明確な「殺意」に俺は耐えられなくなって、その場を逃げ出しとにかく味方を探そうと弟のいる部屋へと逃げ込んだ。
弟の部屋に逃げ込むように飛び込むと、「うわ!!びっくりした!!なに?兄貴?」と声が飛んできた。
声の方へと視線をやるとそこには弟の姿があり、弟は机に座って書類を書いていた。
俺はパニックになっているながらも、とにかく父と母の状況を弟にも伝えなければと思い「父さんと母さんの目が逆になってて、死ね死ね死ね死ね死ねって言ってて、その前にテレビにノイズが...」「ごめん、何言ってんのか全然わからない」自分が思っている以上にパニックになっていたみたいで、混乱した自分の頭で整理した話しをしたところで、自分でもでも何を言ってるのかわからなかった。
そんな話しをしたところで、弟にいま正に起こった事が伝わる訳もなく、弟も俺もいま起こってることが理解できなかった。
それでも、とにかく今の状況を伝えなければいけないと思い「あのな...あの...だから...とにかく父さんと母さんが変なんだ!!」そう言って再度弟の方を見ると、弟は口を半開きにして目を目一杯見開いていた。
「両親とおなじだ...」父・母がおかしくなって弟まで同じように徐々に目が左右逆を向いて行くのを見た俺は、そのまま玄関に向かって走った。
玄関から外に出る前にちらっと居間が目に入ったが、父と母がこちらを向いて立っていた。
やはり目は左右逆を向いていたが...
玄関を出ると全速力で人の通りが多い場所まで走った。
その後、少し息を整え携帯で職場の一人暮らしの先輩に事情を話し先輩の家に行った。
先輩は「幽霊」とか「おばけ」と言われる類のものが見える人で、普通だったら理解不能な自分の話を真剣に聞いてくれた。
「そうか...よし明日知り合いのお寺に行って何とかしてもらうわ。今日は一先ず休め。お前ひどい顔してるぞ?」と言われ、その日は先輩の家に泊まった。
先輩はああ言ってくれたが、一睡もできなかったのは言うまでもない...
次の日、先輩は夜勤で俺は休みだった。
朝6時ぐらいに先輩の家から車で大体30分くらいのお寺に連れて行ってもらい、先輩の知り合いと言うそこの住職に昨日の話をした。
「分かりました。さぞ大変だったでしょう?」憔悴しきっている自分の顔を見て住職は心配そうに言ってくださった。
その後に、「そのままにしておく訳にはいきません。このままにしておくとあなただけでは無くご家族も危険です。」と言われ、先輩と住職と俺の3人で俺の家に戻ることになった...
家に着き玄関を開けると、家の中はまさに『地獄』だった...
父は両腕両足から血をダラダラと流しながら、居間と廊下を行ったり来たり歩いていた。
居間の隅にはベッタリと血のついた包丁が数本捨ててあり「あと2往復したら右足の血管は...あと3往復したら二の腕の血管は...」とブツブツと独り言を言っていた。
母は風呂場にいた。
満タンに水を張った浴槽へ自らの頭を突っ込んで、それから出てを繰り返していた。
自らの手で頭を押しながら「ブクブクブク...ゴボッゴボゴボゴボ...」となりながら水の中で唸っていて「死ぬ手前...死ぬ手前...死ぬ手前...」と笑っていた。
弟は部屋におり机に向かって文字を書いていた。
手にはカッターナイフが握られていて机の上には鏡があった。
「○○市○○町...」と呟きながら、弟は手に持っていたカッターナイフで自宅の住所を体に刻んでいた。
俺は恐ろしさと、変わり果ててしまった家族の姿を見たショックで泣き崩れてしまった...
その後、住職さんと住職さんが応援に呼んだ他の寺の方に無事3人共助けてもらい今は何ともないです。
ただ今でも弟と父の体には痛々しい傷が残っていて、温泉とか行くとかなり鬱になります。
あの後、住職さんに聞いた話になるのですが、家族があのようになってしまった原因は「先祖」にあったみたいでした。
時代劇とかで「末代まで呪ってやる...」っていうセリフよくありますよね。
あれのリアルバージョンだったみたいです...
しかも、呪い方も酷くて「ただ殺す」のではなく「家族ができてから乗り移って、ゆっくりと時間をかけて追い詰め、苦痛を味合わせていく」というやり方の呪いだったと聞かされました。
ただ、今回は呪いの方も簡単には行かなかったみたいです。
というのも、俺の前世が虚無僧で、俺が生まれた時から手が出せなかったみたいです。
でも、あの夜痺れを切らせて「死ね」って家族を使って圧力をかけたと言う事だったそうです。
しかし、俺がその場から逃げてしまって、仕方ないから「他の家族だけでも...」ということになったんだとか...
呪いが強すぎて住職さんでは完全には呪いを解く事は出来ず、俺以外の家族は今でも常に肌身離さずお守りを持っています。
お守りを手放してしまうとどうなるのかはわかりませんが、いまだに呪いが解ける事は無く、どうする事も出来ないので恐怖に脅かされる日々が続いています。