厄災を音と刃で断つ
──あなたの周囲に「気配」を感じたことはありませんか?
理由もなく苛立ち、事故が続き、人間関係が崩れる。
それは偶然ではなく、「見えない悪意」が結び目となって現れたものかもしれません。
日本には、それら目に見えぬ厄災・霊障・呪いを断ち切る“術”が存在します。
九つの音。九つの印。九つの斬撃。
それが「九字護身法」
呪術的結界を構築し、あらゆる干渉を斬り払う秘儀です。
九字とは何か?「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」

【臨(りん)・兵(ぴょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・陣(じん)・烈(れつ)・在(ざい)・前(ぜん)】
アニメや映画などで、忍者が唱えている呪文。
それが「九字」です。
一見フィクションのように思えるこの言葉は、実際には中国の道教系の秘呪(六甲秘呪)に由来し、密教・修験道・忍術などで派生しながら日本で広く伝わりました。
この九字には、それぞれ厄災・霊障・邪気を断ち、霊的結界を張る力があります。
宗派や流派によって語句や動作は異なりますが、本質はすべて「異界からの干渉を断ち、身を守るための術式」です。
九字護身法とは|結界を張る“呪術の斬撃”
起源と伝承
九字護身法は、その名のとおり「九字を切る」ことで災いを祓う呪術儀式です。
起源は中国道教の「神仙修行」に見られ、日本の密教や修験道に混入・融合しながら発展してきました。
修験道では、毘沙門天・十一面観音・如意輪観音・不動明王・愛染明王・聖観音・阿弥陀如来・弥勒菩薩・文殊菩薩の力を借りた結界構築法とされています。
そのほかに天照皇大神・八幡大菩薩・春日大明神・加茂大明神・稲荷大明神・住吉大明神・丹生大明神・日天子・摩利支天の力で行う方法もあります。
密教においては、この術が持つ最大の意味は「結界の構築と因縁の遮断」。
つまり、外界からの干渉、悪意・念・呪い・不浄なる気配を刀印で断ち、術者の周囲に結界を張るという実践的な呪法です。
九字の基本構成|異なる流派の音と意味
九字護身法は、仏を表す手印と発声を行い、刀印を結んで格子状に9本の線を書く作法が一般的です。
道教の六甲秘呪では「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・前・行」とされています。
また、日蓮系統の法華行者では「令・百・由・旬・内・無・諸・衰・患」を九字とし、格子状の九字を切る作法もあります。
臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前の意味
- 臨:精神統一/霊的集中
- 兵:身を守る兵法
- 闘:外敵との戦い
- 者:術者自身の強化
- 皆:力の集中
- 陣:霊的な布陣
- 烈:力の爆発/攻撃
- 在:結界の内側
- 前:敵・厄災との対峙
忍術や呪術の場合、この中から1字を取り出して術に組み込むものも確認されています。
緊急性や機動力が求められる場合は、省略して使われることがあるようです。
現在確認されている九字の流派
| 流派 | 九字の構成 | 特徴 |
|---|---|---|
| 密教系 | 臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前 | 結界形成と因縁遮断に特化。現代に最も広まっている基本形 |
| 忍法系 | 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・前・行 | 戦陣・布陣・進撃の加護を意識した構成。戦法的な統制・進行を象徴する |
| 鎌倉密儀 | 朱雀・玄武・白虎・勾陣・帝久・文王・三台・玉女・青龍 | 神獣・陰陽五行・九星思想に基づいた方位術。記録は断片的 |
| 法華経由来 | 令・百・由・旬・内・無・諸・衰・患 | 仏典に由来し、広大な範囲の病魔・衰退を防ぐ祈願文 |
今回は、一番一般的な【臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前】と言う組み合わせでの解説をしていきたいと思います。
九字の切り方①|早九字護身法(簡易式)
簡易式の九字護身法は、緊急性の高い場面で素早く出し切ることができます。
必要なもの
- 両手のみ(道具不要)
- 不動明王の真言
- 九字の読み方
手順

- 刀印を結ぶ
人差し指・中指を立て、
他の指を親指で握り込む - 刀を“鞘”に納める構えを取る
左手を腰に当て、
右手の人差し指・中指を収める - 不動明王の真言を3回唱える
後述の真言を参照 - 刀を抜き、九字を唱えつつ交差切り
一文字につき一閃、
縦・横を交互に切り結ぶ - 切り終えた時点で結界が完成する
不動真言は3種類ある!?
字護身法の儀式の冒頭で唱える不動明王の真言には、目的や場面に応じた三つの形式が存在します。これは密教における咒力(しゅりょく)の階層を示し、用途によって使い分けられます。
| 種類 | 文言 | 特徴と用途 |
|---|---|---|
| 小咒 | ノウマク・サンマンダバザラダン・カン | 簡略形式。即時の降魔や霊障対処、刀印などと併用しやすい |
| 中咒 | ノウマク・サンマンダ・バザラダンセンダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウン・タラタ・カン・マン | 結界・印法・九字護身などに使用される中心的な真言 |
| 大咒 | ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ サラバビギナン・ウンタラタ カンマン | 正式な密教儀式・護摩・加持祈祷にて場全体を護持する |
九字の切り方②|切紙九字護身法(正式)
九字印の結び方と手順
1字ずつ手印を結びながら九字を唱えることで、より強固な結界と術効果を得ます。

| 九字 | 印名 | 結び方の概要 |
|---|---|---|
| 臨 | 普賢三昧耶印 | 人差し指を立て、他の指を組む |
| 兵 | 大金剛輪印 | 中指を絡ませ、親指を立てる。他の指は組む |
| 闘 | 外獅子印 | 親指・中指・薬指を立て、人差し指・小指を組む |
| 者 | 内獅子印 | 親指・人差し指を立て、他の指を甲で合わせる |
| 皆 | 外縛印 | すべての指を外側で組む |
| 陣 | 内縛印 | すべての指を内側で組む |
| 烈 | 智拳印 | 左人差し指を立て、それを右手で包む |
| 在 | 日輪印 | 両手を開き、親指と人差し指で輪を作る |
| 前 | 隠形印 | 左手を軽く握り、右手で覆う |
印を結んだ後、①の手順で刀印を結んで九字を切れば結界が完成します。
九字護身法の終わり方|結界の解除と再開放
アニメや映画で見られる九字護身法は、「九字の切り方①②」で説明した内容で終わりがちですが、本当に重要なのは「九字切りの終わり方」です。九字を戻して術を開放する必要があります。
これをやらないのなら、九字切りは絶対にやってはいけません。
ここからはその理由と手順についてお伝えします。
九字はなぜ戻す必要があるのか?
九字護身法は結界空間です。
結界は善く働けば防壁としての効果がありますが、悪く働けば閉鎖空間となってしまいます。
必ず刀印を納め、真言を唱えてから手印を解きましょう。
九字護身法は、悪しきものだけでなく、善き縁・気の流れすらも遮断します。
九字を解かなければ閉鎖空間を保ってしまうため、必ず「解錠の儀式」が必要です。
戻しの手順
- 再び刀印を結び、刀を鞘に納める
- 真言を唱える
「 オン・アビラウンケン・ソワカ」 ×3 - 次の真言を唱える
「オン・キリ・キャラ・ハラ・フタラン・バソツ・ソワカ」×3 - 次の真言を唱える
オン・バザラド・シャコク」×1 - 指を弾いて、刀印を解く
これで気の流れが正常に戻り、呪的遮断が解除されます。
終わりに|九字を切るということ
九字護身法で悪いものを切ることで、良いものを呼び込むことができるようになります。
ただし、強い意思と目的を持ち、最後の手順までしっかりとやりきらないのなら、九字切りは絶対にやってはいけません。
九字を切るという行為は、ただの儀式的な動作ではありません。
それは、この世の混沌に対して自らの霊的境界線を引く行為であり、「何を受け入れ、何を拒絶するか」を定める魂の防衛線とも言えます。
かつて忍が命を賭して切った九字も、修験者が山中で結んだ九字も、根底にあるのは「見えざる世界に対する確かな線引き」です。
現代においても、SNSや他人の感情、呪いや悪縁に浸食されることなく、自分自身を保つための呪法として、九字は活用できるでしょう。
◎霊障に悩む方へ
もし、あなたの内側に「何かがおかしい」「何かが入り込んでいる」と感じたなら、刀印を組み、不動の名を呼んでみてください。
九字を切るその手に、きっと見えない刃”が宿るはずです。
