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蠱毒の作り方と蠱毒を使った呪術のやり方

蠱毒とは、毒虫を瓶や壺などに詰めて作り上げる、古来から存在する呪具の一種で、蠱毒を使用する事で、強力な呪術的儀式を執り行う事が出来ます。
有名なマンガやドラマなどでも、題材に使われているこの蠱毒ですが、今回はその蠱毒の作り方や、蠱毒を呪術に使用する方法について、詳しく解説していきたいと思います。

蠱毒とは?


蠱毒とは、古来より中国に伝わる生物を用いた呪いの一種、またはその呪いによって出来上がった毒そのもののことです。その始まりは諸説ありますが、過去の文献などにも多く記載されており、かなり古い時代から存在する呪術で、古くから伝わり時間の経過と共に、その呪いの効力をかなり強力なものへと、昇華させてきた呪具・呪術の総称です。

蠱毒という名前の通り、数多くの蟲と皿(容器)を用いて毒物を生み出す呪いではあるのですが、その方法や用途には幾通りかの種類があります。ここでは、蠱毒の作り方と使い方について解説したいと思います。

蠱毒の作り方と呪術での使い方


では実際に蠱毒を使って呪いをかける場合に、必要な物や作り方、蠱毒を使った呪術の執り行い方について詳しく解説していきたいと思います。

・必要な物
蠱毒を行うためにまず必要なものは、何といっても蟲です。ここでいう蟲とは、単に虫のことだけを指しているのではありません。大きな生物では狼や毒蛇、狐から、小さなものでは蛆や虱まで、人間に害を成す生物を百種集めなければなりません(一般的に害があると考えられている生物であれば、毒を持っていない生物でも構いません)。

・作成方法
蟲を百種取り揃えることが出来て初めて、蠱毒の作成が行えます。作成の方法は割と簡単で、百種の蟲を一つの容器に入れお互いを食らい合わせ、生き残った一匹を決めます。この際、生き残ったのが蛇ならば蛇毒、虱ならば虱毒、と言うように、蠱毒の名前が決まります。

・蠱毒の使い方
作成が成功した蠱毒には、様々な使い道が存在しています。中国式の方法では、完成した蠱毒を細かく磨り潰し、呪いを掛ける対象の飲食物の中に混ぜ込ませます。つまり、「とても強力な毒物」として扱うのです。
日本式では、完成した蠱毒を祀ることで、生き残った生物の神霊の力を借りて対象に呪いを掛けます。この方法は、犬神など他の呪法と非常に近いものがあります。≪犬神の呪法についてはこちら≫

その他にも、生き残った生物に、直接呪う対象を襲わせる、といった非常に直接的な方法もあります。
上記のような正しい手順を踏んで作られた蠱毒は、どのような使い方をしても効果は表れます。用途に合わせた蠱毒の使い方をすれば、より強力な呪いの効果が見込めると言う差だけなので、自身の行いやすい方法で、蠱毒を使うのが良いでしょう。

蠱毒の効果と注意点


蠱毒は危険度がとても高く、それでいてあまり対処法が存在しない呪いです。ですから、蠱毒を行う際には最新の注意が必要となります。

・蠱毒の効果
呪いを掛けた対象に現れる症状は様々ですが、日に日に衰弱していき、最終的には死に至ります。蠱毒を使う方法によって効果が変わる、ということは一切ありません。対象を確実に死に至らしめる、という点においては、呪詛の中でも、特に恐ろしい呪術です。

・蠱毒の管理
そもそも、生物を自身の願望の為に道具のように扱うわけですから、出来上がった蠱毒が自身に牙を剥かない、という保証は一切ないのです。
ですから、蠱毒を管理する際は、必ず密閉された容器の中に入れ、不用意に外に出さないようにする必要があります。

・呪う対象の選別
蠱毒の呪いは、一度掛けてしまえば自身の意志で解除することはできません。実際に呪いを掛けようとした人物が後悔し、呪いを取りやめようとしたために自身に呪いが返ってきた、という逸話も存在します。ですから、軽はずみな気持ちで行う事は絶対にやめた方が良いでしょう。

・蠱毒を執り行った時に発生するリスク
蠱毒を祀る、という日本式の方法は、最終的に自身の立場すらも蠱毒の下に位置付けてしまい、蠱毒に支配されるという状態になり、丑の刻参りで言う所の呪い返しの様な状態となります。≪丑の刻参りについてはこちら≫
呪術自体が強力な分、自身に返ってくる呪いも強力になるリスクが存在します。

蠱毒の歴史


初めの方でも述べた通り、蠱毒の歴史はあまりに古く、その始まりがいつであったのかは分かりません。しかし、殷・周時代の甲骨文字に既に蠱毒に類似した呪法の痕跡が読み取れることから、紀元前17世紀頃 から紀元前1046年までの期間には、既に蠱毒、もしくは蠱毒のルーツとなるような呪いが存在していたことが分かります。
また漢の時代から、蠱毒を用いて人を殺そうとしたものは死刑に処す、という法律が存在していることから、時の権力者も蠱毒をかなり恐れていたことが想像できます。

日本への伝来の時期もまた明確ではありませんが、中国と同様に日本にも養老律令に、蠱毒を行ったものへの処罰の記載があることから、少なくとも養老律令が編纂された757年ごろには日本へ伝わっていたことは確実です。
日本では、厭魅と並んで恐れられており、「蠱毒厭魅」は恐ろしい呪いである、という考え方もかなり普及していました。
基本的に、多くの呪術は他国に伝来してからその国に適した形へと、その方法は変遷していきます。しかし、蠱毒に関しては日本に伝来して以降も殆ど変化が見られないことからも、蠱毒という呪いが如何に完成度の高いものであったかが推し量れます。

現在の蠱毒は、そのショッキングな方法と効果の高さから、様々な作品でテーマとして取り上げられることも多いです。おそらくは、漫画やアニメ、小説から蠱毒の存在を知った、と言う方も多いのではないでしょうか。中には、「人間蠱毒」とでも言うべきものを作ろうとしている、といった漫画も存在します。
そういった、蠱毒をテーマにした作品等でも、蠱毒を作成するまでの描写はあるものの蠱毒を解く描写は殆ど存在しません。この理由に関しては、蠱毒の方法に対して、蠱毒の呪いを解く方法があまりにも少ないことが関係しているのではないでしょうか。
つまり、3000年以上前に形作られた呪いに対して、現在でも有効な対処の方法が生み出されていない、ということになります。

蠱毒とは、ただの呪いではなく生物との契約だと言えます。自身の「念」を使う丑の刻参りのような呪法と違い、自分以外の生物の意志がそこに介在していることを忘れないようにしましょう。

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