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ペットにもご利益がある!?意外と知られていない動物神、狼の神「大口真神」とは

意外と少ない日本の動物神

動物ってかわいいですよね。
筆者は動物が大好きで、学校から図鑑を借りてきては、自作の動物クイズを作って友達に自慢した記憶もあります。ちなみに、パンダの尻尾の色は白だと知っていましたか?

そんな、筆者にとっては思い入れが深く、愛くるしく崇高な存在である動物達ですが、日本における動物の神様は比較的少ないようです。
『古事記』や『日本書紀』などの日本神話においても、神々は人間の形を取ることが多いです。
日本の神道は自然崇拝が基本となっており、太陽や山、川、海、森などの自然の要素が神格化されることが多いです。
これにより、自然そのものやその力を象徴する抽象的な神が多くなっています。
そのため、動物そのものを神様とするよりも、神様の使者や象徴として登場することが多いようです。
神社の狛犬や鹿せんべいのニホンジカも神使として有名ですね。

人の姿をした神様といえば、ご先祖様がその神様だったりする血筋もあります。
皇族の方々が実は天照大御神(アマテラスオオミカミ)や高御産巣日神(タカミムスビノカミ)の子孫である、というのも有名な話ですね。

古代エジプトでは日本と違い、動物の神様がたくさんいます。
冥界の神アヌビスはジャッカルの頭を持ちますし、戦の神バステトはライオンの頭を持っています。
たとえば、鷹は鋭い視力と飛翔能力から天空の神ホルスと関連付けられ、ジャッカルは死と再生を司る神アヌビスと結びつけられました。
これにより、動物の姿は神々の力や特性を視覚的に表現する手段となりました。
この辺りの神様はよくゲームのキャラクターとして登場することもあるので、知っている方が多いのではないでしょうか。

動物好きな筆者は、もちろん古代エジプト神話も大好きですが、やはり日本人であるならば日本の神様を推したいものです。
日本では数が少ない動物の神様ですが、今回はその中でも筆者が大好きな狼の神様を紹介します。

大口真神とは

大口真神(おおくちのまがみ)とは、別名で御神犬とも呼ばれる狼の神様の名前です。
名前の示すとおり大きな口の狼という意味で「まことの神」つまり、真実の、正しい神さまとされています。

大口真神は、人間の性質を見分ける力を持ち、善人は守護しますが、悪人を罰する善悪に強い神様です。
厄除けの御利益があり、特に火難や盗難から守る力が強く、なんと絵馬にも描かれていたそうです。

この大口真神様ですが、かつて日本に生息していたニホンオオカミが神格化されたものです。
ニホンオオカミは本州、四国、九州に生息していた狼の亜種です。
狼の中では最も小さく中型の日本犬ほどですが、脚力がとても強かったと言われています。
尻尾の先が丸まっているのも特徴です。なんだか可愛らしく感じますね。

残念ながらニホンオオカミは20世紀初頭に絶滅しており、現在では生きた姿を見ることはできません。
非常に少ないですが、ニホンオオカミの剥製が展示されているところもあるので、かつてのニホンオオカミの姿は剥製でのみ見ることができます。

狼の神様が生まれた理由

一見して良い神様に思える大口真神様ですが、神様になった経緯は意外と恐ろしかったりします。

奈良時代に編纂された大和国の風土記『大和国風土記』には、こう書いてあります。

むかし明日香の地に老狼ありて多くの人を食らう。土民畏れて大口の神という。その住める所を名付けて、大口の真神原という云々風土記に見えたり

『枕詞燭明抄(中)』

これは、かつて明日香という場所で老いた狼が住んでいたものの、その狼はたくさんの人を喰らっていた。地元民はその狼を恐れて神とし、狼が住んでいるところを大口真神原と名付けたという内容になります。
今では人間を襲う熊がいますが、昔は狼も恐怖の対象だったようですね。
この大口真神原の話は『万葉集』にもこう記されています。

大口の まかみの原に ふる雪は いたくなふりそ 家もあらなくに

『万葉集(第八巻)』[題詞]冬雜歌 / 舎人娘子雪歌一首

この詩は舎人娘子(トネリノヲトメ)が雪を詠んだもので、大口真神原に降る雪があまりにもひどいので、家に帰るまではどうかこれ以上は降らないでほしいとの意味が込められています。
この大口真神原には豪族の飛鳥衣縫造祖樹葉(アスカノキヌヌイノコノハ)の邸宅があったとされており、用明天皇の代に蘇我馬子が寺を建立しました。
崇峻天皇の代には後の飛鳥寺である法興寺の造営が始まったとされています。
現在の奈良県明日香村飛鳥の中央部に当たる場所ですね。

また『日本書紀』では日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征の際、大鹿の姿で現れた邪神を野蒜(やまびる)で退治しましたが、霧に巻かれて道に迷ったことがありました。そこに突然白い狼が表れて道案内をしてくれたため、日本武尊は「大口真神としてこの御岳山に留まり、すべての魔物を退治するように」と白い狼に語ったとされています。
以下に記載しますが、この話は後においぬ様の伝説と呼ばれ、ブロンズの像が奉納されている神社もあります。

大口真神が祀られている神社

大口真神様が祀られている神社は少ないですが、最も有名なのが東京都青梅市にある「武蔵御嶽神社」です。おいぬ様のブロンズ像が奉納されたのも、なんとこの神社なんです。
おいぬ様を祀っている神社なので、本殿の狛犬もニホンオオカミを象っています。
お札にもおいぬ様のお姿が描かれており、狼や犬好きにはたまらない神社です。

武蔵御嶽神社では十二年に一度『大口真神式年祭』も行われており、おいぬ様の御神像を間近で見ることができます。
最後に行われたのは2023年4月15日(土)から5月21日(日)なので、残念ながら本記事の執筆時点では2035年、つまり丁度十二年後に行われることになります。気になる方はぜひ見に行ってみてください。

なおこの神社ではおいぬ様にちなんで、愛犬の健康を願って御祈祷ができます。
日本では古くから、動物は「穢れ」と考えられており、神社や聖域に連れて入ることができないとされていますが、こちらの神社は愛犬と一緒に御祈祷を受けることが可能です。
他にも愛犬のお祓いができる犬形代やペット用のお守りもあるので、ペットと一緒に神社を訪れるのにもオススメです。

まとめ

既に日本では見ることの叶わない野生の狼ですが、昔はかなり身近な存在だったようですね。
大口真神を祀る武州御嶽山では、一昔前まで狼と人が共存していました。
狼は危険な存在ではありますが、害獣を退治してくれたり、邪神や魔物を退治してくれるありがたい存在でもあったようです。
ニホンオオカミをもうこの目で見ることができないとなると寂しく思います。

ちょっと怖い理由で神様になった狼ですが、大口真神は厄除けや盗難や火難除け、愛犬の健康祈願やお祓いにも御利益があるので、現代社会でもぜひ御利益を授かりたいものです。

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