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現代に存在する魔女術の後継者たち ウィッカとは

「魔女」と呼ばれる人たちの存在は世界中で余りにも有名であるにも関わらず、その実態は未だに謎のヴェールに包まれたままです。

この事実を裏付ける様に「魔女」という言葉を聞いた時に多くの人が想起するイメージは多様です。

「尖った帽子と黒いローブを身に纏い、箒にまたがり空を飛ぶ、鼻が大きな老婆」「悪魔と契約し、不思議な術を用いて人々に害を与える悪女」「人里離れた山の中に暮らし、大釜で薬を作ったり占いを行う女性」あるいは「可愛らしい宅配を行う少女」など人によって様々な魔女像が存在し、全てが魔女であると言えます。

今回はこれらの魔女の中から、古代の魔女術を継承する「現代の魔女 ウィッカ」 について紹介していきます。

動画でも記事の内容を紹介していますので、興味のある方は是非、ご覧ください。

そもそも「本当の正しい魔女」って何ですか? ウィッカを知る前に

冒頭に簡単に紹介した様に魔女という存在に対するイメージは個人によって様々であり、さらに国や文化、宗教の違う場所ではよりかけ離れたイメージを持ちます。

この様な事実を受けた時に「本当の正しい魔女」とは何なのかという疑問が発生します。

しかし、この疑問に対して正確な答えを出すことは難しいです。

なぜなら、魔女という存在は特定の一箇所から発生・伝播したものではなく、同時多発的に様々な地域で発生し、発展した概念だからなのです。

例えば、邪馬台国を治めた女王「卑弥呼」は鬼道と呼ばれる妖術を用いていたと言われています。摩訶不思議な特別な力を持ち、何らかの妖術を扱っていたという視点から見れば「卑弥呼」も魔女の一人であると言えます。

その他にも、魔女に対する呼称はフランス語では「ソルシエ(妖術師)」、ドイツ語では「ヘクセ(老婆)」、ラテン語では「マレフィカ(悪い魔法を使う女の意)」、英語では「ウィッチ(賢い、または曲げるの二つの説がある)」などがあり、それぞれが持つ意味も多様です。

これらの近い文化圏の魔女の中で一定の分類と結びつけは可能ですが、諸外国で共通した「本当の正しい魔女」というものは存在しないと考えても良いでしょう。

過去を遡り魔女のルーツについて考えるも良いですが、時代の流れと共に混ざり合い、発展した現代の魔女に目を向けることも重要です。

では、現代の魔女術の継承者と呼ばれる「ウィッカ」について紹介していきます。

現代に存在する魔女術の後継者たち ウィッカとは?

さて、ここからは現代に存在する魔女術の後継者たち「ウィッカ」について解説を行うわけですが、その前に一点注意があります。

「ウィッカ」にも1世紀以上の歴史があり、発生から現代に至るまでに様々な発展や派生、派閥が存在します。これらか解説する事項はウィッカの全体像を中立的に捉えたものなので、厳密には異なる部分や派閥によっては誤りが発生する可能性がありますが、ご容赦下さい。

ウィッカ発生以前の魔女について「なぜ魔女は滅びへと向かったのか?」

ウィッカについて語るためには、その発生以前の歴史について多少の知識がなければいけません。(魔女の歴史をある程度、知っているという方は軽く読んでください。)

「現代に存在する魔女術の後継者たち」という表現に対して全く違和感がない、という人は特に魔女の歴史を学ぶ必要があります。

例えば、「現代に実在する寿司職人の後継者たち」という言葉なら違和感を覚える人が多いかもしれません。この文章の解釈は二つに分解でき、「現代に実在する」という言葉は暗に「過去に滅びた可能性」を示し、「後継者たち」という言葉は「ロストテクノロジーを受け継ぐ者たち」という隠喩になります。

つまり、「寿司職人」という日本人ならば存在して当たり前の文化には「滅びた歴史も失われた技術」という認識も歴史もないため違和感を覚えるのです。
逆説的に上記の魔女術の文節に違和感を覚えないということは「魔女術が滅びた、存在しない失われた技術かもしれない」という潜在的な認識があるからなのです。

その実、魔女術には「滅ぼされた歴史」があり、その歴史があるからこそ「現代の魔女術 ウィッカ」が存在します。

余談が長くなりましたが、一般的な教養を持つ人ならば「魔女狩り」という言葉を聞いたことがあると思います。

魔女狩りの全貌を明かすための歴史を示すためには10世紀〜18世紀にわたる西洋の歴史について語らなければいけません。しかし、それでは本題を外れ、本が数冊は書けるので、今回は簡単な解説を行います。

まず、魔女狩りの前身となった出来事が「異端審問」です。この異端審問とはキリスト教内部で行われた「正しい教義とは異なる教えを布教する者を犯罪者とし、弾圧する運動」です。そして、この運動が後に魔法使いへの異端審問へと発展します。

異教への弾圧が魔法使いへの弾圧へと移った一番大きな原因が「悪魔学の発展」です。主な異端宗教を壊滅させたキリスト教の学者の内部で、この頃から「全ての悪い出来事が悪魔の仕業であり、悪魔と契約して魔法を扱う魔法使いは悪魔崇拝の異端者だ」という考えが発生しました。これにより、魔法使いへの異端裁判が発生しますが、「魔法使いとされる人を裁く」という趣旨であったので、男女両方が裁判を受けていました。(ここでの魔法使いは真偽に関わらず告発を受けた人間です。)

しかし、15世期頃から告発される人間の女性比率が圧倒的に高くなり始めます。女性が増えた理由にはキリスト教内部で発生した「女性はみだらで、信仰心が低く、迷信深いので魔法に染まりやすい」という考えがあります。

そこに追い討ちをかける様に、ドイツの異端審問官ハインリヒ・クラマーという人物が魔女狩りを押し進めようと「魔女への鉄槌」という書籍を発行します。その内容には女性への圧倒的な差別感情が込めらており、「魔法使いはほとんど女で、改心もしないので必ず殺すべき」というものです。

さらに、「魔女への鉄槌」の第三部には魔女裁判を行う手引きが紹介され、「告発を受けた魔女には自白をするまで残虐な尋問を繰り返」すという過激な裁判方法が記されていました。

当然、この書物は内容の異常な過激さから発行当初は流行らず、著者のクラマーも審問官の地位を剥奪されましたが、結果的に「魔女狩り」の激化に伴い約180年間で29回の重版を受けるほどに売れました。また、この時期には宗教改革が発生し、カトリック教会はプロテスタントとの対立に追われ「魔女裁判」を行う余裕がなかったことも大きな要因です。

しかし、プロテスタントが地位を確固たるものへとし、双方での牽制が収束すると共に「魔女狩り」は再熱します。

16世紀の半ばを過ぎた頃に、カトリックとプロテスタントの信徒の間では「相手を批判する前に、神の信者として正しい行いをしよう」という考えが生まれました。つまり、悪魔信者を排斥する姿勢を示すことが自分の宗派の力を示す行為だという動きが活発化し、それに伴い「魔女狩りが」民衆や聖職者問わず激化、暴走したのです。国家の歯止めが効かなくなった魔女狩りは欧州全土で総計4〜6万人の犠牲者を出し、18世紀ごろまで続きました。

魔女狩りの勢いは非常に激しく、総人口の1/10もの犠牲者を出した国もあります。

この様に歴史を大まかになぞるだけでも「魔女術が元祖である欧州で滅ぼされた、失われた」と考えることができます。また、遠く離れた日本で潜在的な認識を生んでいたとしても頷けます。

ウィッカの発生と発展を知る 継承されし魔女術 ウィッカ

ここまでの内容から「魔女術」という文化が衰退したということは確実なことです。

しかし、当時の悪魔への恐怖、魔女への恐怖・忌避は未知への恐怖であるとも言えます。よって、近代科学が発展し、未知が解明されるにつれて魔女に対する誤解は解消され、不条理に悪だとされた魔女への新たな解釈が誕生しました。

そこで立ち上がったのが古代の異教信仰の復興を目指したイギリス人の魔術師「ジェラルド・ガードナー」です。彼は「魔女とはキリスト教の台頭以前より古代ヨーロッパで信仰された自然宗教の信者であり、月の女神と角のある男神を信仰する宗教である」として現代の魔女術ウィッカの創始者になったのです。

補足ですが、魔女を意味する英語ウィッチは必ずしも「女性」を指す言葉ではなく、男の魔女も存在します。現にウィッカの創始者であるガードナーが有名な男の魔女であり、日本語訳と英語本来の意味の間で生まれる齟齬です。

彼によって創始されたウィッカには独自に構築された魔女術(ウィッチクラフト)の体系化と古代宗教の復興の二つの側面があります。

ウィッカの魔術として最も基本的であるとされるものが薬草の知識と精神性を高める瞑想の方法であり、ウィッカを学ぶ過程において様々なまじないや占いの習得が可能です。加えて、ウィッカには古より魔女が受け継いできたとされる個々人の魔術の秘伝書があり、これはガードナーがまとめた「影の書」という書物に基づきます。(ウィッカの信者はそのままウィッカと呼ばれることもあるが、ウィッカンとも呼ばれます。)

さらに、ウィッカの活動は個人の魔術だけではありません。

ウィッカでは集団的な魔術儀式(サバト)も行われています。その中での特にガードナー流派において月の満ち欠けに合わせて毎月行われる魔術をエスバトと呼び、月の女神ディアナの降臨を願う儀式として重視されています。

この様な儀式魔術は「カヴン」と呼ばれる魔女の小規模な集団で行われ、ウィッカは主にこのウガンの集団で活動を行います。同時に、カヴンは先輩の魔女が後輩の魔女に魔術や信仰を伝える教育の場としての役割を果たしていることも特徴的です。

ウガンを形成する人数は主に3〜6人、最大で13人であり、新たな魔女がカヴンに参加して14人を超える場合は二つのウガンに分割されます。

このウィッカへの加入は誰でも簡単に行えるものではなく、秘密の参入儀礼があり、それを経ることでウィッカの一員になることが可能です。これは、ウィッカが単純な魔術集団でも宗教団体でもなく、双方の特性を併つ魔女宗である事の現れであると言えます。

最後に現代の魔女術ウィッカから学ぶ「三倍の法則」

ここまで、魔女術衰退の歴史からウィッカの成り立ち、簡単な概要まで解説を行なってきました。

ウィッカは現代においても発展を続けており、流派・宗派が多いことも特徴です。故に全てのウィッカを統括して解説することは困難であり、全てのウィッカの魔女術の秘伝を知ることも不可能に近いと言えます。

しかし、ウィッカの中でも共通した信条があり、それが「三倍の法則」です。

これは「自分の行いは全て、その性質の善悪に問わず、巡り巡って三倍になって自分の元に戻ってくる」という意味を持ちます。

これは日本語的には自業自得と似た意味を持ちますが、三倍という所が異なります。(三倍は大きさを示す指標であり、数学的な意味で三倍ではありません。)

これには、魔女術という神秘的な力を扱うからこそ、自身の行いに一般人以上に注意が必要だという意味が含まれているのかもしれません。

補足情報 日本人がウィッカを学ぶなら

日本人の魔女(ウィッカ)として有名な人物に松尾未来さんという方がいます。この方は個人的なイニシエーションでウィッカを学んだ方です。海外の伝統的なウィッカへのイニシエーションが困難な日本人が魔女術を学ぶなら、彼女の著書を読むことが一番かもしれません。

また、近年では海外のウィッカを学ぶための書籍が翻訳されて日本語で購読できるため、魔女術に興味のある方には良いかもしれません。

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