都市伝説系 降霊術・危険な遊び

狐狗狸さん(こっくりさん)の正しい方法

一時期流行った降霊術に「コックリさん」というものがあります。映画化などもされ、所謂「学校の怪談」としてもかなり有名なので、今更説明は不要かとも思いますが一応、方法や効果、注意点などについて解説をしておきます。

狐狗狸さん(こっくりさん)に必要なモノと方法とその効果


まずは方法ですが、ここでは全国で共通しているであろう、一般的な方法を説明します。
「鳥居」と「はい」「いいえ」、「五十音」を書いた紙と十円玉を用意します。そして鳥居の上に十円玉を乗せ、その上に「コックリさん」を行うメンバー(大抵の場合、3人以上が良いとされます)が指を乗せ、「コックリさん、コックリさん、お出でください」と、声をかけます。すると、指を乗せた十円玉がひとりでに動き出します。終わるときは、「コックリさん、コックリさん、お帰りください」と言って、十円玉が「はい」の上に行った後、鳥居の上に戻ったら「コックリさん」が帰ったことになり、終わることができます。

次に効果ですが、「コックリさん」に質問をした際に、「はい」や「いいえ」、「五十音」の文字の上を十円玉が動き回り、それによって質問に答えてくれる、と言われています。
最後に注意点ですが、「コックリさん」を行っている最中や、「お帰りください」と言ったときに十円玉が「いいえ」の上に行ったときに、十円玉から指を離すと、指を離した人間に「コックリさん」が憑く、と言われています。また、「コックリさん」を行うのに使った紙はその日のうちに48枚に破り捨て、十円玉は3日以内に使わなければ、良くないことが起こる、とも言われています。

派生として、「エンジェルさま」「キューピッドさん」「守護霊様」「キラキラさま」という名前もあります。十円玉ではなく鉛筆を使ったり、呼びかけ方が変わったりしていますが、概ねは同じものと言って良いでしょう。

狐狗狸さん(こっくりさん)の歴史と時代背景


「コックリさん」の「コックリ」には、多くの場合「狐狗狸」という字が充てられ、「狐」や「狗」、「狸」などの動物霊が降ろされるとされます。ただし、何の素養もない一般人が行う場合などは、低級霊が降ろされ危険だとも言われています。

「コックリさん」を行った後、然るべき手順を踏まなかった為、怪現象が起こるようになった、という話は多いです。これらの話は「誰もいないはずのロッカーの中からノックの音がする」「テレビが勝手につく」「ものが落ちる」など、物理的な現象と「コックリさんを行ったうちの一人が体調を崩す」「奇妙な行動をとる」「精神的におかしくなる」などの肉体的な現象に二分することが出来ます。

また「コックリさん」を行ったために起こった実際の事件として、福岡の中学校や兵庫県の高校で「コックリさん」を行った結果、集団でのパニックや過呼吸が起こり、自宅に帰される、病院に運ばれる、などの事態になったこともあります。

「コックリさん」を行う際の「十円玉が動く」「質問に答えてくれる」といった現象や、終わった後に起こる怪現象について、「コックリさん」の歴史を振り返りながら考えてみたいと思います。

幕末から明治にかけての哲学者であり、「妖怪博士」としても有名な井上円了氏は、著書「妖怪玄談」中で、日本で「コックリさん」が広まる道筋について述べています。それによると、最初に日本に「コックリさん」が伝来したのは、伊豆半島であり、その後尾濃、京阪を経て全国的に広まった、とされています。
伝来のきっかけはアメリカの船が伊豆近辺で破損し、その為にアメリカ人の船員が伊豆にしばらく滞在していた時に伊豆の住人に「テーブル・ターニング」を見せたことである、とされます。
「テーブル・ターニング」は海外の降霊術の一種で、数人がテーブルを囲んで手を乗せると、テーブルがひとりでに傾いたり、移動したりする現象です。アルファベットなどを記したウィジャボードと呼ばれる板の文字をテーブルに指させることによって、霊との対話が試みられました。(これについては、別記事で詳しく解説したいと思います。)

これを模したのが最初の「コックリさん」だとされます。この時期の「コックリさん」はまだ「テーブル・ターニング」の要素が強く、竹を三本組んだ上にお櫃の蓋を乗せた簡易なテーブルを作り、参加者でお櫃の蓋を手で緩く押さえて行っていました。現在の「コックリさん」は、日本全国に広まっていく過程で簡易化されたものでしょう。ちなみに「コックリさん」という名前は、この簡易テーブルが揺れる様子を「こっくり」と評したのが、後に「狐狗狸」や「告理(理を告げる)」という字が充てられたとされます。

また井上円了氏は「テーブル・ターニング」や「コックリさん」の実例を集め、研究を重ねた上で、「過去のことは十のうち十当たるが、未来のことは十のうち七、八程度しか当たらない」と述べています。加えて、「参加者に女性や子供がいると成功しやすい」とも述べています。

「コックリさん」の研究を行った上で井上円了氏が出した答えは、「コックリさんとは、人間が無意識のうちに筋肉を動かしたことによる運動である」と結論付けています。この結論は実に先進的で、実際に現在の心理学の分野では、この理屈によって「コックリさん」に関する現象の大方は説明が可能です。

事実、兵庫や福岡で起きた事件も心理学の面から「集団催眠」や「集団ヒステリー」と説明がついています。
また、井上円了氏が述べた「過去のことは十のうち十当たり、未来のことは十のうち七、八しか当たらない」という現象も、過去のことは知っているから当たる、未来のことは、ある程度予想がつくことについては当たり、予想もつかないことについては当たらない」として、井上円了氏自身が結論付けています。

このように歴史や学問の面から「コックリさん」を紐解いていけば、全ては理屈で説明できるように思えます。実際、「コックリさん」を行っている際の現象や、行った後の肉体的な現象については、これでほとんど説明できると言っていいでしょう。

ただし、あと一つ「物理的な怪現象」が残っています。これに関して説明をつける場合、「コックリさん」を行ったことで精神的負荷が大きくなった状態に、偶然「ものが落ちる」や「奇妙な音が聞こえる」といった現象が起こった際、それが「たまたま置き位置が悪かった」「ただの家鳴り」などの物理現象であっても悪い方に解釈して怯えてしまっている、となるでしょう。
実際にそれで説明できる現象も多いでしょう。しかし、全てを「偶然」で片づけるには、事例自体も多いです。「テレビやラジオが勝手につく」「コックリさんを行った教室で、自分は参加してなかったにも関わらずロッカーの中からノックの音が聞こえる」などは、偶然というには不自然さが感じられます。これらの未だ説明が難しい事例が、本当に霊の仕業なのか、いずれ説明がつく現象なのか、それは誰にも分かりません。しかし「コックリさん」自体に、説明がつく危険も説明がつかない危険も存在していることは明らかです。

「コックリさん」は時代を経て、最初期の「簡易テーブル」を用いたものから「十円玉と紙」を用いたものへと、その行い方は変容を重ねています。ですから、正しい方法、というのはその時代によって様々に変わってきます。
ただし、方法が変容していく中でただ一つ変わっていない「注意点」が存在します。それは、「『コックリさん』を行っている間は、決して『簡易テーブル』や『十円玉』から、手を離してはいけない」ということです。大抵の怪現象は、肉体的現象にしろ、物理的現象にしろ、この決まりを破ってしまったことで発生します。ですから、あまりお勧めはしませんが、
万が一「コックリさん」を行う場合はこの一点だけは必ず守るよう、注意しましょう。

最後に、もし「コックリさん」を行い、何か良くないモノに憑かれた、もしくはそう感じた場合の即席の対処法だけお伝えします。
それは、「気にしないこと」です。「コックリさん」に限らず、人に憑く、または憑こうとするモノは、こちらがその存在を確認したときにより力を持ちます。ですから、もし気付いていたとしても、気付いていないふりをして、徹底的にその存在を無視することが被害を最小限に留める一番の方法なのです。

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